出張買取(訪問購入)のクーリング・オフ。8日間の数え方と「査定だけ」の断り方

万見編集部 /公開 2026年9月9日 /更新 2026年9月9日

業者が自宅に来て買い取る「訪問購入」は、特定商取引法で書面を受け取った日から8日間クーリング・オフできます。査定だけを頼んだ場合の勧誘の禁止、品物を渡さない権利、通知の出し方を、条文と消費者庁・国民生活センターの資料だけを根拠に整理しました。

出張買取で契約したあと、取り消せますか

書面を受け取った日を1日目として8日間、書面かメールで通知すればクーリング・オフできます(特定商取引法58条の14)。期間中は品物の引き渡しも拒めます(58条の15。2026年9月9日確認)。

売る前に

ピアノの査定を頼む前の確認リスト

確認日
2026年9月9日(この日に各資料の内容を確かめました)
根拠
法令の条文と官公庁のページだけを根拠にしています。民間サイトの説明は使っていません。
資料
e-Gov法令検索(デジタル庁) 特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号) 令和8年8月12日施行版
e-Gov法令検索(デジタル庁) 特定商取引に関する法律施行令(昭和51年政令第295号) 令和8年6月1日施行版(第34条)
e-Gov法令検索(デジタル庁) 特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号) 令和8年5月21日施行版(第132〜150条)
消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問購入」
消費者庁 特定商取引法ガイド 事例紹介「訪問購入」
消費者庁 特定商取引に関する法律の解説(令和7年6月1日時点版) 第5章の2 訪問購入(p.四〇三〜四五九)
消費者庁・経済産業省 特定商取引に関する法律等の施行について(通達、令和6年11月19日付け) 第5章の2 訪問購入関係
消費者庁 特定商取引に関する法律施行令第34条で規定する物品の具体例
国民生活センター 訪問購入(各種相談の件数や傾向) 2026年7月31日更新
国民生活センター 不用なお皿の買い取りのはずが、大切な貴金属も強引に買い取られた(2023年9月27日公表)

8日間は、契約した日ではなく書面を受け取った日から数える

クーリング・オフができるのは、法定の書面を受け取った日を1日目として8日間です(特定商取引法58条の14第1項)。起算日になるのは契約書面(58条の8)を受け取った日ですが、それより前に申込書面(58条の7第1項)を受け取っていれば、そちらの日が1日目です。

4月1日に受け取ったなら4月8日まで通知でき、9日からはできません

書面は、申込みを受けたらその場で申込書面、契約を結んだあとは遅滞なく契約書面を渡す決まりです(58条の7第1項・58条の8第1項)。「遅滞なく」の日数は条文になく、消費者庁の逐条解説が通常3〜4日以内と説明しています。その場で代金と品物をやり取りする現金取引では、契約書面もその場で渡します(58条の8第2項)。

見落としやすいのは、書面が渡されない場合です。書面が無い、またはクーリング・オフに関する事項などの記載が欠けた書面しか無いときは、起算日が来ないので8日間は進行しません(逐条解説p.四四六)。「契約から8日過ぎたからもう無理」と思う前に、手元の書面に何が書いてあるかを見てください。

起点は契約した日ではなく、書面を受け取った日。その日を1日目として8日目まで通知できる
起点は契約した日ではなく、書面を受け取った日。その日を1日目として8日目まで通知できる

「査定だけ」と頼んだ相手に、業者は売るよう勧められない

自宅で「査定だけ」を頼んだ場合、業者は査定を超えて買取契約の勧誘をすることができません。法律は、勧誘の要請をしていない消費者に対して、自宅などで買取の勧誘をすることも、勧誘を受ける意思があるかを確認することも禁じています(58条の6第1項)。消費者庁のガイドと逐条解説(p.四〇九)は、査定だけの依頼は「勧誘の要請」に当たらないと説明しています。業者側から電話で「訪問して勧誘してよいか」と尋ねて得た同意も、要請にはなりません。

品物の範囲も限られます。食器の買取を頼んで来てもらった業者が、訪問先で指輪について勧誘したり、指輪を売る気があるか確認したりすることは禁止です(逐条解説p.四〇九)。国民生活センターが2023年9月27日に公表した事例は、皿の買取のはずが貴金属を買い取られたという、この型のものでした。

勧誘の要請をした場合でも、業者は勧誘を始める前に「勧誘を受ける意思があるか」を確認しなければなりません(58条の6第2項)。訪問販売では努力規定にとどまるこの確認が、訪問購入では義務規定です。契約しないと伝えた相手に再び勧誘することも禁じられ(第3項)、「うちは貴金属は売りません」と言えば、貴金属全般について再勧誘が禁じられます。

業者には勧誘の前に、登記上の名称・買取の勧誘が目的であること・勧誘する物品の種類を告げる義務もあります(58条の5)。住居ならインターホン越しに開口一番で告げる必要があり、「××買取センター」のような架空の名称や「不用品」という種類では足りません。逐条解説は「物品の査定に来ただけです」と目的を偽る手口を典型例として挙げています。

これらの違反に直接の罰則はなく、指示(58条の12)や2年以内の業務停止命令(58条の13)の対象です。

契約したあとも、8日間は品物を渡さなくてよい

クーリング・オフ期間内であれば、引渡しの期日を決めていても、品物の引渡しを拒むことができます(58条の15)。拒んでも債務不履行にはなりません。「契約したらすぐ渡さないと損害賠償になる」と告げることは不実告知にあたります(58条の10第1項第6号)。拒んでいる間は、特約が無ければ業者も代金の支払いを保留できます(逐条解説p.四五〇)。

業者には、対面で品物を受け取るときに「引渡しを拒める」と告げる義務があります(58条の9)。その場で代金を受け取って品物を渡す現金取引では書面より先に品物が手を離れるため、この口頭の告知が消費者にとって唯一の判断機会になると逐条解説は説明しています(p.四二一〜四二二)。

「期間内に引渡しを拒絶すると買取価格が1割下がる」のような、拒んだ人に不利な価格の定めは契約書面の記載基準に反し、書くことはできません(施行規則133条第1項)。

通知は書面かメールで。電話だけでは法定の通知をしたと後から示せない

通知は書面、または電子メールや業者サイトの専用フォームなどの電磁的記録で行います(58条の14第1項・第2項)。効力は通知を発した時点で生じるので(発信主義)、届いた日ではなく発信した日が期間内かどうかで決まります

電話で伝えただけでは、法定の通知をしたことを後から示せません。消費者庁の資料は、口頭の申出を業者が異議なく受け入れた場合は合意解除になることが多いと説明していますが、電話には発信の記録が残りません。電話で伝えた場合も、期間内に書面かメールを出して記録を残してください。

消費者庁は、郵送なら特定記録郵便・書留・内容証明、メールなら送信メールの保存、フォームならスクリーンショットの保存を勧めています。業者が指定した方法以外(SNSのDMなど)で発した場合の効力は、公的資料で確認できませんでした。

「書面受領から4日で不可」「個人的な都合では不可」「違約金は法律で決まっている」という説明を、逐条解説(p.四二四)は不実告知の例として挙げています。書面に「解約不可」と書くこと自体が書面の記載基準に反し(施行規則133条第1項)、その書面を理由に解除を断る手口は消費者庁の事例紹介ページにあり、逐条解説(p.四三二〜四三三)は指示・業務停止命令の対象になる行為として挙げています。

不実告知や威迫で誤認・困惑して期間を過ぎた場合もクーリング・オフはでき、業者が改めて「クーリング・オフできる」旨の書面(様式第7)を渡し、口頭でも告げた日から8日を経過するまで行使できます(58条の14第1項ただし書、施行規則149条)。

通知は書面か電磁的記録で。発信した記録を手元に残す
通知は書面か電磁的記録で。発信した記録を手元に残す

自動車・家具・家電などは対象外。ピアノは対象外と書いた公的資料を確認できなかった

訪問購入の規制(クーリング・オフを含む)がかからない物品は、施行令34条に列挙されています(法58条の4)。自動車(二輪を除く)、家庭用電気機械器具(携行が容易なものを除く)、家具、書籍、有価証券、レコード・磁気的記録媒体・光学的記録媒体(CD・DVD・ゲームソフトなど)の6区分です。区分に見えても、骨とう品・収集品として取引される物は規制の対象です。

施行令を3つの版で引いたら、条番号が全部違いました。現行は34条です。古い番号の解説を見かけたら、e-Govで現行の条文を確かめてください。

消費者庁が示す「家具」の具体例は、たんす・机・いす及び腰掛け・鏡台・ソファー・ベッド・マットレス・テーブル・レンジ台・テレビ台・棚・サイドボード・げた箱・衣類整理箱・金庫の15品目です。ピアノも楽器も、ここには挙げられていません。正直に言うと、ピアノについて編集部は断定できませんでした。逐条解説・通達・具体例の訪問購入に関する記述にはピアノや楽器への言及が無く、「家具として対象外」とする公的な解釈も、「対象」と明記した資料も見つかっていません。

品目とは別に、呼び方で規制が外れる場合があります。「いくらでもいいから買い取って」「その価格なら売るので来て」のように、自宅で契約することを自分から請求して業者を呼んだ場合は、不招請勧誘の禁止(58条の6第1項)と、書面交付からクーリング・オフ・引渡し拒絶までの規定(58条の7〜58条の16)が適用されません(58条の17第2項第1号)。

氏名等の明示(58条の5)と、勧誘意思の確認・再勧誘の禁止(58条の6第2項・第3項)は残ります。「査定をしてほしいので来てほしい」と、売る意思を決めずに呼んだ場合は「請求した者」に当たらず、規制は全部かかります。着物の買取を請求して呼び、予定していなかった指輪も買い取られたなら、指輪の取引に適用除外はありません。

訪問購入の相談は年7,000〜8,000件台。困ったときの相談先は消費者ホットライン188

国民生活センター(PIO-NET)に登録された訪問購入の相談件数は、2023年度8,623件、2024年度7,909件、2025年度7,523件、2026年度は5月31日時点で826件(前年同期823件)です(2026年7月31日更新)。この件数は法違反の件数ではありません。消費生活センター等から国民生活センターに回された経由相談を含まず、特定商取引法上の訪問購入に当たらない相談も含むという注記が、2023年9月27日の発表に付いています。

同じ発表では60歳以上が全体の8割近くを占め、業者名や対象物品を告げない・物品名と価格を書いた書面を渡さない・引渡し拒絶権を伝えない、の3点が問題として挙げられていました。相談先は消費者ホットライン188、警察相談は#9110です。

売る前に

ピアノの査定を頼む前の確認リスト

型番・製造番号・搬出経路。この3つを控えてから2社以上に聞くと、回答の幅が狭まります。

確認リストを見る

よくある質問

もう品物を渡してしまい、業者に「転売した」「紛失した」と言われました。品物は戻りますか

業者が8日間のうちに品物を第三者へ渡したときは、相手の名称・住所・電話番号・引き渡した年月日・品物の特徴を遅滞なく消費者に通知する義務があります(特定商取引法58条の11、施行規則144条)。相手方にも「クーリング・オフされる可能性がある」旨を書面で通知する義務があり(58条の11の2)、消費者は解除を相手方にも主張できます(58条の14第3項、善意かつ無過失の第三者は除く)。「紛失した」と言って返さないことを、消費者庁の逐条解説(p.四三二〜四三三)は指示・業務停止命令の対象になる行為として挙げています。

受け取った買取代金はどう返しますか。振込手数料や利息、違約金は払う必要がありますか

クーリング・オフをした場合、業者は損害賠償や違約金を請求できません(特定商取引法58条の14第4項)。受け取っていた代金を返すための費用と利息は業者の負担で(同条第5項)、渡していた品物の返還費用も業者が持ちます。消費者に不利な特約は無効です(同条第6項)。

8日を過ぎてから品物を渡したくなくなりました。業者からいくらまで請求されますか

期間を過ぎるとクーリング・オフはできず、品物を渡さないなどの不履行で契約が解除された場合に業者が請求できる上限を、特定商取引法58条の16第1項が定めています。上限は、代金を受け取った後なら代金相当額とその利息、受け取る前なら書面作成費・引取費用など契約の締結と履行に通常要する費用で、これに法定利率の遅延損害金が加わります。営業員の日当や交通費、「無料」と言っていた査定の費用は請求できず、この条文は業者にその額を請求する権利を与えるものでもありません(消費者庁 逐条解説p.四五二)。

契約書面には何が書いてあるはずですか。品名や金額が書いてない書面しかありません

物品の種類・購入価格・支払いと引渡しの時期と方法・クーリング・オフと引渡し拒絶に関する事項に、業者の名称・住所・電話番号・契約年月日・物品名と特徴などを加えた記載が必要で、物品名が「不用品」程度では種類の明示になりません(特定商取引法58条の7第1項、施行規則132条)。クーリング・オフと引渡し拒絶の事項は、赤枠の中に赤字で書く決まりです(施行規則133条第2項・第3項、134条)。記載が欠けた書面しか渡さない業者には、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり)があります(同法71条1号)。

万見編集部

法令の条文と官公庁のページを編集部が確認して書きました。個別の事情に関わる判断は、消費者ホットライン188または警察相談(#9110)に確認してください。

万見編集部は、買取店が公開している買取実績を1件ずつ記録し、集計期間・件数・出典を付けて相場を示します。買取店の集客支援を本業とし、店側の値付けの仕組みを知ったうえで、売る側に向けて書いています。

最終更新 2026年9月9日 / 数値確認 2026年9月9日 / 編集方針 / 誤りの指摘