買取業者の電話がしつこい。どう言えば法律上「断った」ことになるのか
万見編集部 /公開 2026年9月11日 /更新 2026年9月11日
買取業者からの電話は、かけること自体は禁じられていません。止められるのは断ったあとの再勧誘です。どう言えば「断った」ことになるのか、玄関先で何を確認させられるのかを、特定商取引法の条文と消費者庁の逐条解説だけを根拠に整理しました。
買取業者からの電話を法律で止められますか
電話をかけること自体は特定商取引法58条の6第1項では禁じられていません。ただし「結構です」など断る意思を示せば、その後の勧誘は同条第3項で禁止されます(2026年9月11日確認)。
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- 確認日
- 2026年9月11日(この日に各資料の内容を確かめました)
- 根拠
- 法令の条文と官公庁のページだけを根拠にしています。民間サイトの説明は使っていません。
- 資料
- 消費者庁 特定商取引に関する法律の解説 第5章の2 訪問購入(令和7年6月1日時点版)
消費者庁 特定商取引に関する法律の解説 第2章第4節 電話勧誘販売(令和7年6月1日時点版)
消費者庁 特定商取引に関する法律第3条の2等の運用指針(再勧誘禁止規定に関する指針)
e-Gov 法令検索 特定商取引に関する法律
e-Gov 法令検索 特定商取引に関する法律施行規則
国民生活センター きっかけは訪問購入?犯罪まがいの深刻なトラブルにご注意を!(2024年9月18日)
消費者庁 消費者ホットライン
電話をかけること自体は、特定商取引法では禁じられていない
買取業者が電話をかけてくること自体を止める条文は、訪問購入の章にありません。特定商取引法58条の6第1項が禁じているのは、勧誘の要請をしていない相手に対して、営業所等以外の場所で勧誘をすること、そして勧誘を受ける意思があるかを確認することです。いわゆる飛び込みの勧誘を止める規定で、禁止は「営業所等以外の場所において」という場所の条件に係っています。
消費者庁の逐条解説は、この規定が場所を限った禁止であることから、電話での勧誘行為やダイレクトメールの送付は妨げられるものではないと書いています(四一〇頁)。条文から入った編集部の予想とは逆で、鳴り続ける電話そのものを止める規定は見つかりませんでした。
電話勧誘販売の章にも再勧誘の禁止はあります。ただし電話勧誘販売の定義(2条3項)は、条文の上では商品や特定権利の販売と、役務の提供を対象としています。業者が物品を買う側に回る買取の電話にこの章がどう及ぶかを正面から述べた消費者庁の資料は、編集部は確認できませんでした。
かかってきた電話については、もう一つ押さえておくことがあります。業者のほうから電話をかけて「訪問して勧誘してよいか」と積極的に尋ね、同意を取り付けた場合、それは58条の6第1項でいう「勧誘の要請」にはなりません(逐条解説四〇九〜四一〇頁)。査定だけを頼んだ場合、業者に一般的な問い合わせをした場合、資料の郵送を頼んだ場合も同じです(四〇九頁)。逆に、広告を見た人が自分から電話をかけ「○○を売りたいので契約について話を聞きたい」と伝えたときは、要請があったことになります(同頁)。
「結構です」と言えば、断ったことになる
断りの言葉は「結構です」で足ります。58条の6第3項は、売買契約を締結しない旨の意思を表示した相手への勧誘を禁じています。逐条解説と運用指針は、この「契約を締結しない旨の意思」の例として「売りたくないです」「関心ありません」「お断りします」「結構です」を挙げています(逐条解説四一〇頁、運用指針Ⅱ-2-(1)①・Ⅱ-5-(1))。契約の意思がないと明示していれば、言い回しは問われません。
効かない断り方もあります。「今は忙しいので後日にしてほしい」とだけ告げた場合、その場その時点で勧誘を続けることは禁じられますが、日を改めて勧誘することについての断りの意思表示には当たりません(逐条解説四一〇頁)。売る意思の有無ではなく、都合を答えているからです。
玄関に「訪問販売お断り」とだけ書いた張り紙を貼るのも、それだけでは断りの意思表示に当たりません。対象や内容が不明瞭だから、というのが運用指針の説明です(Ⅱ-2-(1)①)。
一度断れば、別の担当者が来ても勧誘は禁止される
断ったあとの勧誘の禁止は、その場かぎりで終わりません。逐条解説は、その訪問時に勧誘を続けることはもちろん、その後あらためて訪問して勧誘することも禁止されるとし、同じ会社の別の勧誘員が勧誘することも当然に禁止されると書いています(四一〇〜四一一頁)。担当者が代わったから断りは無効、という理屈は通りません。
断りの効果は、そのとき勧誘されていた品物より広く及びます。「時計は売りません」と言えば、勧誘中の特定の型式だけでなく持っている時計全般について、「うちは貴金属は売りません」と言えば貴金属全般について、断りの意思が表示されたと解されます(四一一頁)。品目を大きく言い切るほど、範囲は広く取れます。
では、断ったあとに電話がかかってくることはどうか。ここは調べた範囲では割り切れませんでした。逐条解説が第3項の説明で挙げているのは、その訪問時に勧誘を続けることと、あらためて訪問して勧誘することで、電話には触れていません。一方で国民生活センターは2024年9月18日の資料で、不審に思って断ったのに何度も電話がかかってくるという事例を、58条の6第3項に関わる問題点として挙げています。条文の「勧誘」に電話が含まれると書いた公的な記述を、編集部は見つけていません。
58条の6に違反しても罰則はありません。指示(58条の12)と業務停止命令(58条の13)の対象になります。
執ような勧誘を別の角度から拾う規定もあります。施行規則146条1号は、迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘すること、引渡しを受けること、申込みの撤回・解除や引渡し拒絶を妨げることを、指示の対象になる行為として定めています。「迷惑を覚えさせるような仕方」は客観的に見て相手が迷惑を覚える方法であればよく、実際に迷惑と感じたことまでは必要ありません。時間帯は条文には書かれていません。正当な理由なく午後9時から午前8時までのような不適当な時間帯に勧誘すること、長時間にわたり勧誘すること、執ように何度も勧誘することは、逐条解説が挙げている例です(四三三頁)。同条は続けて、判断力の不足に乗じて契約させること(2号)、知識や経験に照らして不適当な勧誘(3号)、契約書面に年齢や職業などの虚偽を記載させること(4号)、公共の場所で進路に立ちふさがったりつきまとったりすること(5号)も並べています。
電話で「はい」と答えても、玄関先でもう一度確認させられる
訪問に電話で同意していても、業者は玄関先でもう一度確認しなければなりません。58条の6第2項は、訪問購入をしようとするときに、勧誘に先立って相手に勧誘を受ける意思があることを確認しないで勧誘することを禁じています。
訪問販売にも同じ形の規定(3条の2第1項)がありますが、そちらが努力規定であるのに対し、訪問購入のこれは義務規定です(逐条解説四一〇頁、運用指針Ⅱ-4)。買いに来る側には、売りに来る側より強い条文がかかります。
しかも、勧誘の要請を電話で受けていた場合であっても、電話等で確認することでは足りません。実際に自宅を訪ねて、買取の説明などを行う前に確認する必要があります(逐条解説四一〇頁、運用指針Ⅱ-4)。電話で「はい」と答えた記憶があっても、玄関先で改めて聞かれるはずのものです。聞かれないまま説明が始まったなら、その場で断って構いません。
電話を受けたときに控えておくこと
断った記録の取り方を定めた公的な資料は確認できませんでした。以下は法律上の要件ではなく、編集部が控えておくと後で役に立つと考えた項目です。
- かかってきた日時
- 名乗った会社名と担当者名
- 勧誘された品物(時計、貴金属、着物など、相手が言った呼び方のまま)
- 自分が答えた言葉(「結構です」と言ったのか、「今は忙しい」と言ったのか)
- 訪問の約束をしたかどうか
自分が答えた言葉を書き留めておくのは、断り方の項で見た区別が、そのまま効き方の違いになるからです。「結構です」なら第3項の断りに当たり、「今は忙しい」なら日を改めた勧誘は止まりません。勧誘された品物を控えるのは、断りの効果がその品目全般に及ぶためです。
電話番号を業者の名簿から削除させる請求権は、特定商取引法には見当たりませんでした。かけてくる相手を名簿の側から止める手段は、この法律の中では確認できていません。
勧誘が続くときの相談先は、消費者ホットライン188です。近くの消費生活センター等につながります。国民生活センターのバックアップ相談は03-3446-0999(平日10時〜16時)、警察への相談は#9110です。
売る前に
ピアノの査定を頼む前の確認リスト
型番・製造番号・搬出経路。この3つを控えてから2社以上に聞くと、回答の幅が狭まります。
よくある質問
「今は忙しい」と言えば、断ったことになりますか
なりません。「今は忙しいので後日にしてほしい」とだけ告げた場合、その場その時点の再勧誘は禁じられますが、日を改めて勧誘する場合の断りの意思表示には当たらないと消費者庁の逐条解説(四一〇頁)が説明しています。「結構です」「お断りします」のように、売る気がないことを言葉にしてください。
玄関に「訪問販売お断り」と貼っておけば効きますか
消費者庁の運用指針は、対象や内容が不明瞭であるため、契約を締結しない旨の意思表示には該当しないとしています。張り紙ではなく、勧誘を受けた相手に言葉で伝える必要があります。
「時計は売りません」と言ったら、他の品物の勧誘も止まりますか
逐条解説(四一一頁)は、断りの意思表示の効果が品物の類型に及ぶと説明しています。「時計は売りません」と言えば持っている時計全般について、「貴金属は売りません」と言えば貴金属全般について、断りの意思が表示されたと解されます。
断ったのに、同じ会社の別の人からかかってきました
逐条解説(四一〇〜四一一頁)は、同じ会社の他の勧誘員が勧誘することも当然に禁止されると説明しています。ただし条文の「勧誘」に電話が含まれると明記した公的な記述は、編集部では確認できていません。国民生活センターは2024年9月18日の公表資料で「何度も電話がかかってくる」を同項の問題として扱っています。