遺品整理業者に買取も頼んでよいか。必要な許可が2種類あることを確かめる

万見編集部 /公開 2026年9月11日 /更新 2026年9月11日

遺品を買い取るには古物商の許可、家庭ごみを運び出すには一般廃棄物処理業の許可が要ります。別の許可です。国民生活センターに寄せられた契約トラブルの類型と、自宅での買取に訪問購入のルールが及ぶ条件を、公的資料だけを根拠に整理しました。

遺品整理業者に買取も頼んでよいですか

買い取るには古物営業法3条の古物商許可が、家庭ごみを運び出すには一般廃棄物処理業の許可が要ります。別の許可で、産業廃棄物処理業や古物商では家庭ごみを回収できません(2026年9月11日確認)。

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ピアノの査定を頼む前の確認リスト

確認日
2026年9月11日(この日に各資料の内容を確かめました)
根拠
法令の条文と官公庁のページだけを根拠にしています。民間サイトの説明は使っていません。
資料
国民生活センター こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル(2018年7月19日)
国民生活センター 見守り新鮮情報 第525号 遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に(2025年10月30日)
e-Gov 法令検索 古物営業法
警察庁 古物営業法等の解釈運用基準について(通達 令和6年8月14日)
環境省 廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!
消費者庁 特定商取引に関する法律の解説 第5章の2 訪問購入(令和7年6月1日時点版)
e-Gov 法令検索 特定商取引に関する法律

買い取る許可と、家庭ごみを運び出す許可は別のものだった

遺品整理の見積りに「買取分は料金から差し引きます」と書かれていることがあります。片付けと買取はひとつの作業に見えますが、根拠になる許可は2つに分かれます。

まず買い取る側です。古物営業を営もうとする者は、都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません(古物営業法3条)。警察庁の通達は、無償または引取料を取って引き取った古物を修理・再生して販売するだけのリサイクルショップは規制の対象から除かれるが、古物の買取りを行っている場合は古物営業に該当する、と書いています(解釈運用基準 第4・4(1))。引き取るだけなら許可は要らず、値段を付けて買うなら要る、という線引きです。

捨てる側は別の話になります。家庭での遺品整理で捨てることにしたごみは一般廃棄物にあたり、市町村から委託を受けた事業者か、市町村長から一般廃棄物処理業の許可を受けた事業者でなければ運搬も処分もできません。国民生活センターは、産業廃棄物処理業や古物商の許可ではこれができないと書いています(2018年7月19日の資料 脚注5)。環境省も、産業廃棄物処理業の許可は工場や企業の廃棄物を処理するための許可、古物商の許可は中古品等の売買を行うための許可であり、これらでは家庭ごみを回収できないと案内しています。

国民生活センターは、買い取ってもらう際に古物商許可証や行商従業者証を確認するよう案内しています(見守り新鮮情報 第525号、2025年10月30日)。

報告されているトラブルは4つの型に分かれる

国民生活センターは2018年7月19日の資料で、遺品整理サービスの契約トラブルを4つに整理しています。(1)契約内容を十分検討しないまま、その場で契約させられる。(2)高額なキャンセル料を請求される。(3)作業当日に追加料金を請求される。(4)残しておくはずの遺品を誤って処分される。

金額の実例も同じ資料にあります。見積金額141,000円に対して最終的に約32万円を請求された例(当初見積りの約2倍)と、37万円の契約をキャンセルしたところキャンセル料17万円を請求された例です。2025年10月30日の見守り新鮮情報 第525号には、当初20万円程度と説明されながら作業後に30万円を請求され見積書をもらっていなかった例と、処分しないよう伝えた重要書類やアルバムまで処分された例が出ています。

件数も出ています。PIO-NETに登録された「遺品整理サービス」の相談は、2013年度73件、2014年度109件、2015年度90件、2016年度114件、2017年度105件でした(2018年6月30日までの登録分、経由相談を含まない)。

ここには断りが付いています。この集計は遺品の買い取りを目的とする相談を含まず、廃品回収サービス等で遺品を処分した場合の相談を含みます。買取そのもののトラブルは、数字の外側にあります。編集部が公表を確認できたのはこの5年度分までで、2018年度以降は見つけられませんでした。105件は2017年度の数字です。

自宅で買い取られた分は、後から取り消せるとは限らない

自宅で遺品を買い取る行為は、特定商取引法の「訪問購入」に当たりえます。訪問購入とは、物品の購入を業として営む者が営業所等以外の場所で売買契約の申込みを受け、または契約を締結して行う物品の購入です(58条の4)。

条文を追ってみると、ここに大きな除外がありました。その住居において売買契約の申込みや締結をすることを請求した者に対して行う訪問購入には、58条の6第1項と、58条の7から58条の16までが適用されません(58条の17第2項1号)。書面の交付も、クーリング・オフも、引渡しの拒絶も外れます

では何が「請求した者」に当たるのか。消費者庁の逐条解説(四五四頁)は、契約の申込みや締結をする意思をあらかじめ持ち、その住居で行いたい旨を明確に意思表示した場合だとして、「いくらでも良いので買い取ってほしい」と言う場合や、事前に価格を聞いたうえで「あの価格であれば売りたいので来てほしい」と請求する場合を例に挙げています。これに対し、単に査定のみを依頼した場合は勧誘の要請に当たりません(四〇九頁)。電話でどう頼むかで、適用される条文が変わります。

除外に当たる場合でも、全部が外れるわけではありません。氏名等の明示(58条の5)と、勧誘を受ける意思の確認(58条の6第2項)、再勧誘の禁止(同3項)は適用されます(逐条解説 四五四頁)。断ったのに勧誘が続くなら、そこは規制の内側です。

除外はもうひとつあります。施行令37条4号は、通常相手方が物品を処分する意思を有すると認められる場合に、相手方が営業所等以外の場所での取引を誘引して行われる購入を挙げ、その「場合」を施行規則150条が「売買契約の相手方がその住居から退去することとしている場合」と定めています。逐条解説(四六〇頁)は、いつかは退去するという曖昧な予定ではなく、たとえば電話で取引の誘引があった日から2週間程度の後に退去する予定である場合を例に挙げています。

業者が引取料等と称して消費者から代金を受け取る形になっている場合は逆向きで、その業者は訪問販売における有償の役務提供を行っていると解され、訪問販売の規制(3条の2、6条等)がかかります(逐条解説 四〇六頁の注)。見積りのために訪問を頼み、その場で契約した場合も訪問販売に該当し、書面交付(4条・5条)とクーリング・オフが適用されます。ただし、その住居で契約を締結することを事業者に請求して行われる訪問販売は適用除外となり、クーリング・オフができません(2018年7月19日の資料 脚注4)。

出張買取として来るなら、許可証の提示を求めてよい

自宅に来て買い取るのは、古物営業法の「行商」にあたります。行商は古物商が営業所以外の場所で行う古物の取引で、相手方の住所または居所で行う古物の売買が含まれます(5条1項5号、通達 第5・3(1))。

古物商は行商をするとき許可証を携帯しなければならず、従業者に行商をさせるときは行商従業者証を携帯させなければなりません(11条1項・2項)。相手方から提示を求められたときは、提示しなければなりません(同3項)。玄関先で見せてくださいと言うのは、条文が想定している行為です

買い受けようとするときは、相手方の真偽を確認するため、住所・氏名・職業・年齢を確認する等の措置をとる義務があります(15条1項)。古物を受け取りまたは引き渡したときは、その都度、取引の年月日、品目と数量、特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢等を帳簿等に記載または記録しなければなりません(16条)。不正品の疑いがあると認めるときは、直ちに警察官に申告する義務もあります(15条3項)。

身分証の確認も、何をどれだけ引き取ったかの記録も無いまま買取が進むなら、古物商としての手順は踏まれていません。

頼む前に、残す物と料金の条件を決めておく

国民生活センターが挙げている注意と、上で見た条文から、呼ぶ前と当日にやることを並べます。

  1. 複数の事業者から見積もりを取り、料金と契約内容を比較する
  2. 呼ぶ前に、見積もりにあたって出張料や見積料が発生するかを確認する
  3. 契約時に、作業日・作業内容・料金と、キャンセル料の発生時期と金額を確認する
  4. 残しておきたい遺品は作業する部屋からあらかじめ運び出すか、残す物と処分する物が作業員に分かるよう印をつける
  5. 廃棄物の処理について、住んでいる市町村にルールを確認する
  6. 作業時にはできるだけ立ち会う
  7. 買取が入るなら、古物商許可証か行商従業者証の提示を求める(古物営業法11条3項)

相続人が複数いるとき、一人の判断で遺品を売却できるかは今回は確認できませんでした。困ったときの連絡先は、消費者ホットライン188、国民生活センターのバックアップ相談 03-3446-0999(平日10時〜16時)、警察相談専用電話 #9110です。

売る前に

ピアノの査定を頼む前の確認リスト

型番・製造番号・搬出経路。この3つを控えてから2社以上に聞くと、回答の幅が狭まります。

確認リストを見る

よくある質問

遺品整理と買取は、別々に頼むべきですか

1社に頼んでも構いませんが、必要な許可が別です。買い取るには古物商の許可(古物営業法3条)、家庭から出たごみを運び出すには一般廃棄物処理業の許可が要ります。1社に両方を頼む場合は、両方を持っているかを確かめてください。

「無料で回収します」と言われました。頼んでよいですか

環境省は、産業廃棄物処理業の許可や古物商の許可では家庭ごみを回収できないと案内しています。家庭での遺品整理で捨てることにしたごみは一般廃棄物にあたり、市町村から委託を受けた事業者か、一般廃棄物処理業の許可を受けた事業者しか運搬・処分できません。

自宅で買い取ってもらった後、クーリング・オフできますか

呼び方によります。自分から「この価格なら売るので来てほしい」と、住居で契約することを請求した場合は、書面交付やクーリング・オフの規定が適用されません(特定商取引法58条の17第2項1号)。査定だけを依頼した場合は、この請求には当たらないと消費者庁の逐条解説が説明しています。

業者が本物かどうか、その場で確かめられますか

自宅に来てもらう出張買取は古物営業法上の行商にあたります。古物商は行商をするとき許可証を、従業者に行商をさせるときは行商従業者証を携帯しなければならず、相手方から提示を求められたときは提示しなければなりません(同法11条)。

万見編集部

国民生活センター・環境省・警察庁の公表資料と、古物営業法・特定商取引法の条文を編集部が確認して書きました。個別の被害については消費生活センターに相談してください。

万見編集部は、買取店が公開している買取実績を1件ずつ記録し、集計期間・件数・出典を付けて相場を示します。買取店の集客支援を本業とし、店側の値付けの仕組みを知ったうえで、売る側に向けて書いています。

最終更新 2026年9月11日 / 数値確認 2026年9月11日 / 編集方針 / 誤りの指摘