ピアノや家財を買取店に売ったお金に税金はかかるか(生活用動産の非課税と30万円の例外)
万見編集部 /公開 2026年9月9日 /更新 2026年9月9日
家具や衣服など生活に通常必要な動産を売った所得は非課税で、確定申告も不要です。生活用動産のうち1個または1組30万円超の貴金属・宝石・書画・骨とうは非課税から除かれます。ピアノの明記が無いことと転売の扱いを、所得税法と国税庁の資料だけを根拠に整理しました。
買取店に売って受け取ったお金に、税金はかかりますか
家具や衣服など生活に通常必要な動産の売却益は非課税で申告不要、そのうち1個または1組30万円超の貴金属・書画・骨とうは除きます(所得税法9条1項9号・施行令25条、2026年9月9日確認。ピアノの明記は無し)。
売る前に
ピアノの査定を頼む前の確認リスト
- 確認日
- 2026年9月9日(この日に各資料の内容を確かめました)
- 根拠
- 法令の条文と官公庁のページだけを根拠にしています。民間サイトの説明は使っていません。
- 資料
- 国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
国税庁 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)
国税庁 No.3161 金地金の譲渡による所得
国税庁 No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合
国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
国税庁 No.2020 確定申告
国税庁 No.2250 損益通算
国税庁 確定申告書等作成コーナー 総合課税の譲渡所得とは
国税庁 確定申告書等作成コーナー 生活に通常必要でない資産を譲渡したとき
国税庁 確定申告書等作成コーナー ネットオークションやフリーマーケットアプリなどを利用した個人取引による収入がある場合
e-Gov法令検索(デジタル庁) 所得税法(昭和40年法律第33号)(条文は API v2・令和8年8月12日施行版で確認)
e-Gov法令検索(デジタル庁) 所得税法施行令(昭和40年政令第96号)(条文は API v2・令和8年5月22日施行版で確認)
国税庁 所得税基本通達 法第9条《非課税所得》関係〔強制換価等による譲渡(第10号関係)〕(9-12の3ほか)
国税庁 所得税基本通達 法第33条《譲渡所得》関係(33-1ほか)
国税庁 所得税基本通達 法第35条《雑所得》関係(35-2ほか)
国税庁 F1-42 金地金等の譲渡の対価の支払調書(同合計表)
国税庁 税務大学校 税大ジャーナル35号 講演録 生活用動産の譲渡益や学資貸与の債務免除益に所得税は課されるか(PDF)
国税庁 税務大学校 税大ジャーナル10号 論説 生活用資産を巡る所得税法上の諸問題(PDF)
生活に通常必要な家財を売ったお金は非課税で、申告も要らない
家具・じゅう器・衣服など、本人や配偶者・親族が生活に使う動産のうち、生活に通常必要なものを売って得た所得には、所得税がかかりません(所得税法9条1項9号、所得税法施行令25条)。非課税なので、そのお金だけを理由に確定申告をする必要もありません。
条文が直接挙げているのは家具・じゅう器・衣服で、細かい線引きは政令に委ねられています。国税庁のタックスアンサー No.3105 は、家具・じゅう器・通勤用の自動車・衣服などの生活用動産の譲渡所得は非課税だと書いています。
編集部が読んだ国税庁のページで、家財の売却を実例として扱っていたのは、ネットオークションとフリマアプリの事例でした。No.1906 と確定申告書等作成コーナーの相談事例は、生活に使っていた古着や家財を売った所得は非課税で、確定申告は不要と答えています。正直に言うと、買取店に売った場合を分けて書いた国税庁の資料は、今回読んだ範囲にはありませんでした。所得税法9条1項9号が要件にしているのは、本人や配偶者・親族が生活に使っていた家具・じゅう器・衣服など政令で定める資産かどうかで、条文の要件に売り先は含まれていません。
非課税には裏返しがあります。買った値段より安く売って損が出ても、所得税法はその損失を無かったものとみなす、と定めています(所得税法9条2項1号)。No.1906 も同じ趣旨です。給与など他の所得から引くことはできず、「損をして売ったから還付申告ができる」という説明は条文と合いません。
作成コーナーの相談事例は末尾で、回答は照会の事実関係を前提にしたもので、具体的な取引では異なる課税関係が生じ得る、と断っています。この記事も同じ前提で読んでください。

生活用動産のうち非課税から外れるのは、1個または1組が30万円を超える貴金属・書画・骨とう
非課税から外れるのは、1個または1組の価額が30万円を超える、貴石・半貴石・貴金属・真珠とそれらの製品、べっこう・さんご・こはく・ぞうげ・七宝の製品、それに書画・こっとう・美術工芸品です(所得税法施行令25条1項1号・2号)。No.3105 はこれを、30万円超の貴金属・宝石・書画・骨とうと要約しています。
条文を並べてみて気づいたのは、この30万円が「すべての家財に当てはまる基準」ではないことです。除外の列挙に、楽器・家具・家電は入っていません。30万円を超えたら非課税から外れる、というのは列挙された品目に限った基準です。
もう一つ、施行令25条と国税庁のページの「価額」が、買ったときの値段なのか売ったときの値段なのかは、どちらにも明示がありませんでした。この記事でも、そこは決めずに書いています。
この列挙品目は、所得税法施行令178条1項の「生活に通常必要でない資産」にも含まれます(No.2250)。売って損が出ても、原則として給与など他の所得と通算できません(所得税法69条2項)。作成コーナーも、貴金属・書画・骨とう等で1個又は1組30万円超の物の譲渡損失は、他の所得と通算できないと案内しています。
ピアノが非課税の動産に当たるか、公的資料は答えていない
ピアノを「非課税」と書いた公的な資料は見つかっていません。所得税法9条1項9号、施行令25条、国税庁の No.3105 と順に読みましたが、楽器の語は出てきませんでした。所得税基本通達の第9条関係のうち編集部が読んだページ(根拠にした資料に記載)にも、楽器を挙げた項目は見当たりませんでした。
税務大学校の税大ジャーナル10号と35号の PDF にも「ピアノ」「楽器」の語はありませんでした。35号の講演録は、フリマアプリなどで売った生活用動産の転売益を当然に非課税としてよいかを問題提起していますが、講演者個人の見解と明記されていて、国税庁の公式見解ではありません。
分かっているのは消極的なことだけです。非課税から外す列挙(貴石・貴金属・真珠・書画・こっとう・美術工芸品)に楽器は無い。その一方で、所得税基本通達33-1は譲渡所得の対象を、棚卸資産等と金銭債権を除く一切の資産としていて、ピアノも資産である以上、非課税規定に当たらなければ、原則として譲渡所得の対象になります。
施行令178条1項2号は、主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産を生活に通常必要でない資産に含めていて、ピアノがここに入るかどうかも、公的資料は答えていません。ピアノ教室など事業に使っていたピアノを売った場合の所得区分についても、国税庁の具体例は見つかっていません。
ここは編集部で断定できません。ピアノを売ったお金の扱いは、税務署または税理士に確認してください。
課税になる場合でも、50万円の特別控除を引いた残りが総合課税の譲渡所得になる
30万円超の貴金属等や、生活用動産に当たらない資産を売った所得は、総合課税の譲渡所得になります(所得税法22条2項、No.3105・No.3152)。土地・建物・株式等の譲渡と違い、給与など他の所得と合算して課税されます。
譲渡価額から取得費と譲渡費用を引き、そこから特別控除を引いたものが譲渡所得です(所得税法33条3項)。特別控除は50万円で、譲渡益が50万円に満たないときはその額までです(同法33条4項)。取得日から5年を超えて持っていた資産の譲渡益は長期に区分され、2分の1だけが総所得金額に入ります(同法33条3項2号、22条2項2号)。
読んでいて一番誤解されやすいと感じたのが、この50万円です。買取額の基準ではなく、課税対象の譲渡益から引く控除額です。買取額が50万円を超えると税金がかかる、という読み方は条文と合いません。
この記事では計算例を作りません。取得費と所有期間で結論が変わるからです。
会社員の「20万円以下なら申告不要」は、売却代金ではなく所得で判定する
会社員の「20万円以下なら申告不要」は、売却代金ではなく所得(利益)で判定します。給与を1か所から受け、年末調整が済んでいる人は、給与・退職所得以外の各種所得金額の合計が20万円以下なら所得税の確定申告をしなくてよい、と定められています(所得税法121条1項1号、No.1900)。ここで言う所得は、売却代金から取得費などを引いた後の金額です。給与収入が2,000万円を超える人や、医療費控除などで還付申告をする人には、この申告不要の規定は使えません(No.1900・No.1906)。
申告が必要になった場合の所得税の確定申告期間は、翌年2月16日から3月15日までです(所得税法120条1項、No.2020)。住民税(市区町村への申告)の取扱いは、今回の公的資料では確認していません。
営利目的で繰り返す転売は、家財の非課税も50万円の控除も使えない
営利を目的として継続的に行う資産の譲渡による所得は譲渡所得から除かれ(所得税法33条2項1号)、実態に応じて事業所得または雑所得になります(No.3105、所得税基本通達35-2)。買ってきて売ることを営利目的で繰り返す、いわゆる転売がここに入ります。この場合は生活用動産の非課税も、譲渡所得の50万円の特別控除も使えません。
「何を売ったか」より「どう売っているか」で区分が変わります。事業所得と雑所得のどちらになるかは、社会通念上事業と言える程度の活動かどうかで判定します(所得税基本通達35-2注)。
売る前に
ピアノの査定を頼む前の確認リスト
型番・製造番号・搬出経路。この3つを控えてから2社以上に聞くと、回答の幅が狭まります。
よくある質問
親が買ったピアノを、子が実家の片付けで売ります。取得費はどう考えますか
親が買ったピアノを子が売るときの取得費や取得日の考え方は、今回確認した所得税法の条文と国税庁のタックスアンサーには見つかりませんでした。取得費そのものは、購入代金に設備費・改良費を加え、使用や時間の経過による減価分を引いた額です(所得税法38条1項・2項)。課税になるかどうかと譲渡所得の額は取得費で変わるため、本文の50万円の特別控除の項と合わせて読んでください。
楽器や家財を何点も一度に売って、合計が30万円を超えたら課税されますか
所得税法施行令25条1項の30万円は「1個または1組の価額」で判定すると書かれています。複数点を一度に売ったときの数え方や、セット物を1組と数える基準についての公的な説明は、今回見つかりませんでした。
金やプラチナを売ると、税務署に知られますか
金・白金の地金と金貨・白金貨を業者に売る人は、原則として氏名・住所・マイナンバーなどを業者に告知する義務があり(所得税法224条の6)、業者は「金地金等の譲渡の対価の支払調書」を支払確定日の翌月末日までに税務署へ出します(国税庁 F1-42)。対象は地金と金貨・白金貨だけで、宝飾品やピアノなど一般の家財は対象外です。告知義務の対象から外れる金額は政令に委ねられていて、その金額は今回の資料では確認していません。