遺品を売ると相続を承認したとみなされ、放棄できなくなる。3か月の期限と、保存行為との線
万見編集部 /公開 2026年9月12日 /更新 2026年9月12日
相続人が相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認をしたものとみなされ、その後は相続放棄ができなくなります(民法921条1号)。遺品を買取店に売ることは、この処分にあたりえます。放棄や限定承認は、相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します(915条)。借金が残っている可能性があるなら、売る前に決めることがあります。
遺品を売ると相続放棄できなくなりますか
相続財産の全部または一部を処分した相続人は単純承認をしたとみなされ(民法921条1号)、その後の相続放棄はできません。放棄は相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します(915条、2026年9月11日確認)。
売る前に
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- 確認日
- 2026年9月11日(この日に各資料の内容を確かめました)
- 根拠
- 法令の条文と官公庁のページだけを根拠にしています。民間サイトの説明は使っていません。
- 資料
- e-Gov 法令検索 民法(915条・921条) 令和8年6月24日施行版
裁判所 相続の放棄の申述
裁判所 相続の承認又は放棄の期間の伸長
遺品を売ることは「処分」にあたり、売った時点で相続を承認したとみなされる
相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。単純承認とは、預金や家財だけでなく借金も含めて、被相続人の権利と義務をそのまま引き継ぐことです。いったん単純承認とみなされると、その後に相続放棄や限定承認を選ぶことはできません。
遺品を買取店に売ることは、相続財産の処分にあたりえます。売った代金を受け取った時点で、借金があっても放棄できない立場になる可能性があるということです。条文は「全部又は一部」と書いていて、1点だけの売却が処分にあたらないとは書いていません。何が処分にあたるかの線引きは個別の判断で、公的資料に品目や金額の目安はありませんでした。
相続人が複数いる場合に、1人の処分が他の相続人の放棄を妨げるかどうかは、条文に書かれていません。921条の主語は「相続人」で、処分をした本人について単純承認を擬制する定めです。同居していない相続人が、遺品の売却を知らないまま放棄の手続きを進める場面もありえます。
正直に言うと、遺品整理の場面で一番怖いのはこの順番です。片づけの途中で買取店を呼び、代金を受け取ってから借金の存在を知る。この順番だと、放棄という選択肢が先に消えています。売るのは、放棄するかどうかを決めた後です。
放棄と限定承認は、相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ
相続人は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のいずれかを選びます(民法915条1項)。放棄と限定承認は家庭裁判所への申述が必要で、手続きの案内は裁判所の「相続の放棄の申述」のページにあります。何もしないまま3か月が過ぎると、単純承認をしたものとみなされます(921条2号)。
申述に必要な書類と費用は、裁判所の「相続の放棄の申述」のページに一覧があります。3か月で財産の全体が分からないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることができます(915条1項ただし書)。相続人は、承認や放棄をする前に相続財産の調査をすることができると条文に書かれています(915条2項)。調べる時間は法律が認めていて、足りなければ延ばせます。
3か月は「相続の開始を知った時」から数えます。亡くなった日そのものではなく、自分が相続人になったことを知った時が起点です。裁判所のページも同じ説明をしています。この期間は相続人ごとに別々に数えるので、同じ被相続人でも、知った時が違えば期限も違います。
保存行為と短期の賃貸は、処分にあたらない
民法921条1号にはただし書があり、保存行為と、602条に定める期間を超えない賃貸は処分から除かれています。保存行為とは、財産の価値を保つための行為を指しますが、具体的にどの行為がそれにあたるかは条文に列挙がなく、個別の判断になります。
遺品整理の場面では、腐る物や危険物の片づけ、建物の施錠や雨漏りの修理のような行為と、家財を売って代金を受け取る行為の間に線があります。代金を受け取る行為は、保存行為からは遠い側にあります。線の引き方は事情で変わるので、放棄を考えているなら弁護士に確認してください。
放棄した後に遺品を隠したり使ったりすると、放棄が無かったことになる
放棄や限定承認をした後であっても、相続財産の全部または一部を隠したり、自分のために使ったり、悪意で財産の目録に載せなかったりすると、単純承認をしたものとみなされます(民法921条3号)。放棄の申述が受理された後でも、遺品を売って代金を自分のものにすれば、この号にあたる可能性があります。
放棄した相続人にとって、遺品はもう自分の財産ではありません。処分が必要になったときは、次の順位の相続人や、相続財産の管理の手続きに関わる人に確認してからにしてください。遺品の買取に来る業者の側の決まり(許可・本人確認・クーリング・オフ)は遺品整理で買い取ってもらうときに書いています。
遺品の買取を頼む前に、確かめておくこと
- 借金や保証の有無を調べる。相続人は承認や放棄の前に財産を調査できる(民法915条2項)
- 放棄するかどうかを決める前に、遺品を売らない・代金を受け取らない(921条1号)
- 決められないときは、3か月以内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てる(915条1項ただし書)
- 放棄した後は、遺品を売ったり自分のために使ったりしない(921条3号)
- 売る物と残す物を決めてから、買取や片づけの業者を呼ぶ。判断に迷う場面は、裁判所の手続き案内を先に読む
売る前に
ピアノの査定を頼む前の確認リスト
型番・製造番号・搬出経路。この3つを控えてから2社以上に聞くと、回答の幅が狭まります。
よくある質問
遺品を1つ売っただけでも、相続放棄はできなくなりますか
民法921条1号は「相続財産の全部又は一部を処分したとき」と書いていて、一部でも処分にあたれば単純承認とみなされます。ただし、何が処分にあたるかは個別の事情で判断が分かれ、公的資料に品目や金額の線引きはありません。放棄を考えているなら、売る前に放棄するかどうかを決めてください。
3か月を過ぎてしまったらどうなりますか
相続を知った時から3か月以内に放棄も限定承認もしなかった相続人は、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。財産の調査に時間がかかるときは、期間内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てることができます(915条1項ただし書)。
相続放棄をしたあとに、残った遺品を売ってもよいですか
放棄をした後でも、相続財産を隠したり、自分のために使ったりすると、単純承認をしたものとみなされます(民法921条3号)。放棄した物は自分の物ではないので、売ったお金を自分のものにする行為は避けてください。処分が必要なら、次の順位の相続人や相続財産の管理の手続きに関わる人に確認してください。
遺品整理業者に片づけを頼むことは処分にあたりますか
片づけの中で価値のある物を売ったり捨てたりすれば処分にあたる可能性がありますが、公的資料に業者への依頼を一律に扱う記述はありません。放棄を考えているなら、財産の調査(915条2項)を先にして、売る物と残す物を決めてから頼んでください。遺品の買取そのものの注意点は遺品整理の記事に書いています。