買取店が個人に登録番号を聞かない理由。古物商は帳簿だけで仕入税額控除ができる

万見編集部 /公開 2026年9月12日 /更新 2026年9月12日

インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、事業者が仕入税額控除を受けるには原則として相手の適格請求書が要ります。ただし古物商が適格請求書発行事業者でない人から買い受けた古物は、帳簿への記載だけで控除できます(消費税法30条7項、施行令49条1項1号ハ)。買取店が個人に登録番号を聞かないのはこのためです。売る側が課税事業者なら扱いが変わります。

買取店で売るとき、インボイスの登録番号は要りますか

古物商が適格請求書発行事業者でない人から買い受けた古物は、帳簿に一定の事項を記載すれば適格請求書なしで仕入税額控除ができます(消費税法30条7項・施行令49条1項1号ハ、2026年9月11日確認)。だから個人に登録番号を聞きません。

売る前に

ピアノの査定を頼む前の確認リスト

確認日
2026年9月11日(この日に各資料の内容を確かめました)
根拠
法令の条文と官公庁のページだけを根拠にしています。民間サイトの説明は使っていません。
資料
e-Gov 法令検索 消費税法(30条7項) 令和8年施行版
e-Gov 法令検索 消費税法施行令(49条1項1号ハ) 令和8年9月1日施行版
国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問106(古物商等の古物の買取り等)
国税庁 同Q&A 問104(帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合)
国税庁 同Q&A 問110(帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項)

原則は「帳簿と適格請求書の両方」。古物商には帳簿だけの例外がある

消費税を納める事業者は、仕入れにかかった消費税を売上にかかった消費税から差し引くことができます(仕入税額控除)。この控除を受けるには、原則として帳簿と適格請求書(インボイス)の両方を保存しなければなりません(消費税法30条7項)。適格請求書を出せるのは、税務署に登録した適格請求書発行事業者だけです。

この原則のままなら、買取店が個人から古物を買うたびに、個人に登録番号や適格請求書を求めることになります。そうならないのは例外があるからで、古物商が適格請求書発行事業者でない人から買い受けた古物は、帳簿への記載だけで控除できます(施行令49条1項1号ハ(1))。国税庁のQ&A(問106)は、この取扱いを「古物商特例」と呼んで説明しています。

条件は条文に書いてあります。古物営業法の許可を受けて古物営業を営む古物商であること、相手が適格請求書発行事業者でないこと、買い受けた物が古物営業法2条1項の古物(準ずるものを含む)で、棚卸資産(消耗品を除く)にあたることです。例外は古物商だけのものではなく、質屋が流質物として取得した物や、宅地建物取引業者が買い受けた建物にも同じ形の定めがあります(同号ハ(2)(3))。買い取るという取引の形に合わせて置かれた例外です。

特例が使えないのは、売る側が課税事業者のときと、店に許可が無いとき

特例の対象から外れる場面は3つ読み取れます。1つ目は、売る側が適格請求書発行事業者の場合です。事業用の機材や在庫を売る事業者が登録済みなら、店は特例ではなく適格請求書で控除を受けることになり、登録番号を聞かれるのはこの場面です。2つ目は、買い取った物を棚卸資産として扱わない場合で、店が自分で使う備品として買った物は対象外です。3つ目は、店が古物商の許可を持っていない場合で、条文が「古物営業を営む古物商である事業者」と限定しているためです。

並べてみると、特例の条件はすべて店の側の事情で、売る側が何かを用意する必要はありません。正直に言うと、3つ目は読者にとっての確認材料になります。許可の無い業者は、個人から買い取っても帳簿だけでは控除を受けられません。許可の有無は公安委員会の一覧で調べられ、手順は買取店の古物商許可の確認方法に書いています。

特例を使う店は、帳簿に「該当する旨」と相手の住所を書く

帳簿だけで控除を受ける場合、店はその帳簿に、この仕入れが特例に該当する旨と、相手方の住所または所在地を記載します(施行令49条1項1号の括弧書き)。国税庁のQ&A(問110)は、帳簿に記載が必要な事項をまとめています。

買取のときに住所を聞かれる理由は、消費税の側にも古物営業法の側にもあります。古物営業法は、取引の年月日・品目と数量・特徴・相手方の住所・氏名・職業・年齢・本人確認の方法を記録する義務を店に課しています(16条)。2つの法律が別々に記録を求めていて、店はそれを1つの帳簿や伝票にまとめて残しています。本人確認の仕組みは買取で本人確認が必要な理由に書いています。

売る側にとっては、登録番号も請求書も要らない取引

個人が家財を売る場合、古物商特例は店の側の話で、売る側に適格請求書の発行や登録番号の提示を求めるものではありません。店が「インボイスはお持ちですか」と聞かないのは、聞く必要が無いからです。登録番号を聞かれない取引は、法律どおりの取引です。

店の帳簿の扱いが、売る側の税金を決めるわけではない、という順番も押さえておきます。店が特例で控除を受けたかどうかにかかわらず、売る側の所得税は、売った物が生活用の家財かどうかで判定します。

売る側の税金は別の法律で決まります。生活に通常必要な家財を売ったお金は所得税が非課税で、申告も要りません。1個または1組が30万円を超える貴金属や書画・骨とうは課税の対象になりえます。この線引きは買取で受け取ったお金の税金に書いています。営利目的で繰り返し売る場合や、事業用の資産を売る場合は、消費税の課税事業者にあたるかどうかを含めて、税務署または税理士に確認してください。

売る前に、確かめておくこと

  • 自分が適格請求書発行事業者として登録しているか。登録していなければ、登録番号を聞かれることは無い
  • 売る物が生活用の家財か、事業用の資産か。事業用なら店の扱いも自分の税金も変わる
  • 店が古物商の許可を持っているか。許可の無い店は帳簿だけでは控除できず、記録の義務もかかっていない
  • 住所・氏名を聞かれるのは、消費税の帳簿と古物営業法の記録の両方に要るため
  • 領収書や買取明細は、自分の記録として残す

売る前に

ピアノの査定を頼む前の確認リスト

型番・製造番号・搬出経路。この3つを控えてから2社以上に聞くと、回答の幅が狭まります。

確認リストを見る

よくある質問

個人が家財を売るとき、売る側に消費税の手続きはありますか

古物商特例は買い取る店の側の仕入税額控除の話で、売る側に適格請求書の発行や登録番号の提示を求めるものではありません。売る側の所得税の扱い(生活用の家財の売却は非課税)は、買取で受け取ったお金の税金の記事に書いています。事業として売る場合は税務署または税理士に確認してください。

自分が適格請求書発行事業者(課税事業者)の場合はどうなりますか

古物商特例の対象は「適格請求書発行事業者以外の者」から買い受けた古物です(施行令49条1項1号ハ(1))。売る側が登録している事業者なら特例の対象から外れ、店が仕入税額控除を受けるには売る側の適格請求書が要ることになります。事業用の機材などを売るときは、店から登録番号を聞かれることがあります。

古物商の許可が無い業者に売ると、何か変わりますか

特例を使えるのは、古物営業法の許可を受けて古物営業を営む古物商です(施行令49条1項1号ハ(1))。許可の無い業者は、個人から買い取っても帳簿だけでは仕入税額控除ができません。許可の確認方法は古物商許可の記事に書いています。

店の帳簿には自分の何が書かれますか

特例を使う店は、帳簿にこの取引が古物商特例に該当する旨と、相手方の住所または所在地を記載します(施行令49条1項1号)。古物営業法の側でも、住所・氏名・職業・年齢と本人確認の方法を記録する義務があります(古物営業法16条)。

万見編集部

条文はデジタル庁のe-Gov法令検索で、取扱いは国税庁のQ&Aで、2026年9月11日に確認しました。税務の個別の結論は事情によって変わります。

万見編集部は、買取店が公開している買取実績を1件ずつ記録し、集計期間・件数・出典を付けて相場を示します。買取店の集客支援を本業とし、店側の値付けの仕組みを知ったうえで、売る側に向けて書いています。

最終更新 2026年9月12日 / 数値確認 2026年9月11日 / 編集方針 / 誤りの指摘