買取全般 / 制度
遺品を売ると相続放棄できなくなる?
萬見編集部 /公開 2026年9月12日 /更新 2026年10月8日 /確認 2026年9月11日
遺品を売ると、相続を承認したとみなされる
親の家を片付けていて、買取店を呼べば早く片付きそうだ。 ただ、親に借金があったかどうかは、まだ分からない。
先に、条文で決まっていることを表にしておきます。
| 場面 | どうなるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 放棄を決める前に、遺品を売った | 処分にあたれば、単純承認とみなされる | 民法921条1号 |
| 承認や放棄の前に、財産を調べる | してよい | 915条2項 |
| 保存行為、602条の期間を超えない賃貸 | 処分から除かれる | 921条1号ただし書 |
| 何もしないまま3か月が過ぎた | 単純承認とみなされる | 921条2号 |
| 放棄した後に、遺品を隠したり自分のために使ったりした | 単純承認とみなされる | 921条3号 |
e-Gov 法令検索の民法(令和8年6月24日施行版)から作成。
相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。単純承認とは、預金や家財だけでなく借金も含めて、被相続人の権利と義務をそのまま引き継ぐことです。いったん単純承認とみなされると、その後に相続放棄や限定承認を選ぶことはできません。
遺品を買取店に売ることは、この処分にあたりえます。代金を受け取った後で借金が見つかっても、放棄できない立場になっている可能性があるということです。
1点だけなら大丈夫、とは書かれていない
条文は「全部又は一部」と書いていて、1点だけの売却が処分にあたらないとは書いていません。何が処分にあたるかの線引きは個別の判断で、公的資料に品目や金額の目安はありませんでした。
値の付きそうな物は、1点でも売らずに置いておこう。
相続人が何人もいるとき
相続人が複数いる場合に、1人の処分が他の相続人の放棄を妨げるかどうかは、条文に書かれていません。921条の主語は「相続人」で、処分をした本人について単純承認を擬制する定めです。
同居していない相続人が、遺品の売却を知らないまま放棄の手続きを進める場面もありえます。売る前に、ほかの相続人にも放棄を考えているかを聞いておこう。
正直に言うと、遺品整理の場面で一番怖いのはこの順番です。片づけの途中で買取店を呼び、代金を受け取ってから借金の存在を知る。この順番だと、放棄という選択肢が先に消えています。
アドバイス
買取店を呼ぶのは、放棄するかを決めてからにしよう
売って代金を受け取ってから借金が見つかっても、放棄の道は戻らないかもしれない。先に借金や保証の有無を調べ、放棄するかどうかを決める。売るのは、そのあとでも遅くない。
保存行為と短期の賃貸は、処分にあたらない
民法921条1号にはただし書があり、保存行為と、602条に定める期間を超えない賃貸は処分から除かれています。保存行為とは、財産の価値を保つための行為を指しますが、具体的にどの行為がそれにあたるかは条文に列挙がなく、個別の判断になります。
遺品整理の場面では、腐る物や危険物の片づけ、建物の施錠や雨漏りの修理のような行為と、家財を売って代金を受け取る行為の間に線があります。代金を受け取る行為は、保存行為からは遠い側にあります。
線の引き方は事情で変わります。放棄を考えているなら、手を付ける前に弁護士に確認してください。
形見分けと売却の境目
迷いやすいのは、写真や衣類を家族で分ける形見分けと、遺品を売って代金を受け取ることの境目です。形見分けが処分にあたるかどうかは、条文に書かれていません。売って代金を受け取ることは、921条1号の処分にあたりえます。
アドバイス
迷う物は、売らずに残しておこう
処分にあたるかどうかの線は、条文には引かれていない。値の付く物や、形見分けで分けたい物は、放棄するかを決めるまで家に置いておく。迷ったら売らずに、家庭裁判所の手続き案内を先に読もう。
放棄と限定承認は、相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ
相続人は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のいずれかを選びます(民法915条1項)。放棄と限定承認は家庭裁判所への申述が必要です。何もしないまま3か月が過ぎると、単純承認をしたものとみなされます(921条2号)。
3か月は「知った時」から数える
起点は亡くなった日そのものではなく、自分が相続人になったことを知った時です。裁判所の「相続の放棄の申述」のページも同じ説明をしています。
この期間は相続人ごとに別々に数えるので、同じ被相続人でも、知った時が違えば期限も違います。自分が知った日を、メモに残しておこう。
調べる時間は、延ばせる
相続人は、承認や放棄をする前に相続財産の調査をすることができると条文に書かれています(915条2項)。3か月で財産の全体が分からないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることができます(915条1項ただし書)。調べる時間は法律が認めていて、足りなければ延ばせます。
申述に必要な書類と費用は、裁判所の「相続の放棄の申述」のページに一覧があります。申し立てる前に、そこで確かめよう。
アドバイス
調べきれないなら、3か月のうちに伸長を申し立てよう
借金や保証の有無は、すぐには分からないこともある。3か月で全体が見えないなら、期限が来る前に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てる。手続きは、裁判所の「相続の承認又は放棄の期間の伸長」のページで確かめよう。
放棄した後に隠したり使ったりすると、放棄が消える
放棄や限定承認をした後であっても、相続財産の全部または一部を隠したり、自分のために使ったり、悪意で財産の目録に載せなかったりすると、単純承認をしたものとみなされます(民法921条3号)。放棄の申述が受理された後でも、遺品を売って代金を自分のものにすれば、この号にあたる可能性があります。
放棄した相続人にとって、遺品はもう自分の財産ではありません。処分が必要になったときは、次の順位の相続人や、相続財産の管理の手続きに関わる人に確かめてからにしよう。
遺品の買取に来る業者の側の決まり(許可・本人確認・クーリング・オフ)は遺品整理で買い取ってもらうには?手順と注意に書いています。買取を頼むなら、先に読んでおこう。
遺品の買取を頼む前に、確かめておくこと
業者を呼ぶ前に、次の5つを済ませておこう。
- 借金や保証の有無を調べる。相続人は承認や放棄の前に財産を調査できる(民法915条2項)
- 放棄するかどうかを決める前に、遺品を売らない・代金を受け取らない(921条1号)
- 決められないときは、3か月以内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てる(915条1項ただし書)
- 放棄した後は、遺品を売ったり自分のために使ったりしない(921条3号)
- 売る物と残す物を決めてから、買取や片づけの業者を呼ぶ。判断に迷う場面は、裁判所の手続き案内を先に読む
遺品を売ると相続放棄できなくなりますか
遺品を売ると、相続を引き受けたとみなされ、放棄できなくなることがあります(民法921条1号)。期限は相続を知った時から3か月です(915条)。放棄するかどうかは、売る前に決めよう。
気になったら
ピアノがいくらになるか、無料で査定だけ頼めます
査定だけ頼んで売らなくてもかまいません。多くの店が査定料とキャンセル料を無料と書いています。頼む前に、型番・製造番号・搬出経路の3つを控えておくと、回答の幅が狭まります。
よくある質問
遺品を1つ売っただけでも、相続放棄はできなくなりますか
民法921条1号は「相続財産の全部又は一部を処分したとき」と書いていて、一部でも処分にあたれば単純承認とみなされます。ただし、何が処分にあたるかは個別の事情で判断が分かれ、公的資料に品目や金額の線引きはありません。放棄を考えているなら、1つでも売る前に、放棄するかどうかを決めよう。
3か月を過ぎてしまったらどうなりますか
相続を知った時から3か月以内に放棄も限定承認もしなかった相続人は、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。財産の調査に時間がかかるときは、期間内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てることができます(915条1項ただし書)。調べきれないと思ったら、3か月が過ぎる前に申し立てよう。
相続放棄をしたあとに、残った遺品を売ってもよいですか
放棄をした後でも、相続財産を隠したり、自分のために使ったりすると、単純承認をしたものとみなされます(民法921条3号)。放棄した物は自分の物ではないので、売ったお金を自分のものにするのはやめよう。処分が必要なら、次の順位の相続人や、相続財産の管理の手続きに関わる人に確かめてからにしよう。
相続放棄をしたら、実家の遺品はそのままにしておいてよいですか
放棄した人は、その相続については初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。それでも、放棄の時に遺品を現に占有しているときは、次の相続人か相続財産の清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存しなければなりません(940条1項)。放棄の後も遺品を預かっているなら、売ったり捨てたりせず、引き渡す相手が決まるまで今の状態を保っておこう。
遺品整理業者に片づけを頼むことは処分にあたりますか
片づけの中で価値のある物を売ったり捨てたりすれば処分にあたる可能性がありますが、公的資料に業者への依頼を一律に扱う記述はありません。放棄を考えているなら、財産の調査(915条2項)を先にして、売る物と残す物を決めてから頼もう。遺品の買取そのものの注意点は、遺品整理の記事に書いています。
注記
根拠にした資料
- 確認日
- 2026年9月11日(この日に各資料の内容を確かめました)
- 根拠
- 法令の条文と官公庁のページだけを根拠にしています。民間サイトの説明は使っていません。
- 資料
- e-Gov 法令検索 民法(915条・921条・939条・940条) 令和8年6月24日施行版
裁判所 相続の放棄の申述
裁判所 相続の承認又は放棄の期間の伸長
条文はデジタル庁のe-Gov法令検索で、手続きは裁判所のページで、2026年9月11日に確認しました。よくある質問で引いた939条・940条は、2026年10月の手直しで読み足しました。個別の事案の結論は事情によって変わるので、迷う場面は家庭裁判所の手続き案内を先に読んでください。 最終更新 2026年10月8日 / 数値確認 2026年9月11日 / 編集方針 / 誤りの指摘